論文まとめ

研究紹介とか

Inhibitory controlの変動がアルコール消費を予測する

アブスト

背景

これまで、客観的に測定されたInhibitory controlと、「制限違反」(計画よりも多くのアルコールを飲むこと)を含むアルコール消費との関連を調べるのに、EMAの手法は適用されていない。これは、消費行動に対する抑制性制御の予測力は、その行動をコントロールしようとしている人の中で最も高いはずであり、したがって、そのために抑制性制御を働かせようとする可能性が高いという理論的な主張に基づいている。

実際、抑制性制御(および主観的自制心などの関連する構成要素)とアルコール摂取量との関連を調査した実験室での研究では、アルコール摂取量を評価する前に、参加者に意図的に飲酒を制限するよう動機付けを行っている。

この研究では,評価期間中に参加者の飲酒制限の動機付けを高めるために,評価期間の直前に参加者全員に簡単な介入を行った。評価期間中は,大酒飲みのグループを対象に,1日2回,2週間にわたり,抑制性制御(ストップシグナル課題)と,計画および実際のアルコール消費量を測定した。1日2回測定したのは,複数回測定することで信頼性が高まること(Shiffman et al.2008)と,1日の中での抑制性制御の変動を調べることができるからである。

 

方法
飲酒量を減らしたいと考えているヘビードリンカー(N=100)にスマートフォンを貸し出し、1日2回、午前10時から午後6時までの間にランダムな間隔で停止信号タスクを実施してもらった。

また、参加者は毎日、計画したアルコール消費量と実際のアルコール消費量、主観的な渇望感と気分を記録した。

筆者らは、抑制性制御の日内変動(停止信号反応時間)が、計画的な飲酒や渇望に加えて、飲酒を予測するという仮説を立てた。


結果
マルチレベルモデリングにより、1日のアルコール消費量は、計画消費量(β=0.816、95%CI 0.762-0.870)と渇望(β=0.022、95%CI 0.013-0.031)によって予測されたが、抑制性制御は、アルコール消費量の追加的な変動を予測しなかった。

しかし、二次解析では、計画的消費と渇望をコントロールした上で、一日の間の抑制性コントロールの低下の大きさが、その日のアルコール消費量の増加の有意な予測因子であることが示された(β=0.007、95%CI 0.004-0.011)。

 

結論
これらの知見は、抑制制御の短期的な変動がアルコール消費を予測することを示しており、抑制の一過性の変動が大量飲酒エピソードの危険因子である可能性を示唆している。

 

【まとめ】

  1. 先行研究と比べてどこがすごい?
    スマホを用いた経験サンプリングで測定し、日内変動も視野に入れている

  2. 技術や手法のキモはどこ?
    スマホを用いて行動実験を実施し日内変動との関連を調査している点

  3. どうやって有効だと検証した?
    マルチレベルモデリング解析を使って、飲酒量との説明関係を調査している。

  4. 議論はある?
    スマホでの調査なので、交絡要因は多数ありえる

  5. 次に読むべき論文は?
    De Wit H (2009) Impulsivity as a determinant and consequence of drug use: a review of underlying processes. Addict Biol 14:22–31かな